本と映画の埋草ブログ

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アリー my love_メモ◎002「愛は妥協から」[Compromising Positions]

 「アリー」第2話目は、なんといってもジョン・ケイジ初登場の回。

 「アリー my love」の舞台となる法律事務所「ケイジ&フィッシュ法律事務所」の共同経営者であるジョン・ケイジはシリーズを通して重要人物の一人だが、シーズン最初はレギュラーというより、ゲスト的な扱いだったようだ。この2話目に登場した後は、6話目まで登場しなくなる。

 ジョン・ケイジとは、高名な現代音楽家と名前が同じ。おそらく偶然ではないのだろう。
 私は現代音楽に関する知識など一切ないが、昔、ジャズピアニスト山下洋輔の面白エッセーを読んでいたからジョン・ケイジの名前をたまたま知っていた。最も有名な「4分33秒」はピアノの前で音を出さないという曲らしく、山下洋輔もこの曲を演奏したことがあるという。
 いずれにせよ、そういった変な音楽を作るような変な人、ということでその名が付けられたのではないか、と勝手に想像している。また「アリー my love」のジョン・ケイジは天才弁護士でもあるので、同じく天才という意味もあるのだと思う。

 さて、そんな天才なのだが、ドラマ「アリー my love」に登場するジョン・ケイジは売春婦を買ったため逮捕されてしまう、というエピソードで姿を現す。大変にカッコ悪い登場だ。社長が買春で逮捕されたのだ。従業員にとって、こんなに体裁の悪いことは無い。情けない。
 しかも、ジョン・ケイジは売春婦を買った件に関し、スタッフたちを前に釈明演説を行う。すなわち素人の女性を騙すのに比べると、プロを買う方が誠実との主張。演説後、ものすごく変な空気になるのだが、ジョンはこの意見が誠実だったと信じており、スピーチについて好感度アンケートを取って回るというのが可笑しい。アリーは最初は、上司だからと気づかいをみせていたのだが、結局「あなたの演説、サイテー!」と言い放つ。

 もうひとりの経営者フィッシュの歳上の恋人ウィッパーも初登場。演じるのはダイアン・キャノンという人で、調べてみると、この人はかつてケーリー・グラントの奥さんだった人であるという! なんか凄いなあ。

 この回は、ケイジの買春、フィッシュと恋人ウィッパーの喧嘩(ウィッパーが若い男とキスしていたのをアリーが目撃し、それをフィッシュに言ってしまう)、そしてアリーの元恋人ビリーがバチュラパーティーに売春婦を呼んでいた過去、この3つのエピソードで騒動が起こるという回。
 バチュラパーティとは、結婚前に花婿と損保友人が馬鹿騒ぎをする習慣らしい。映画では「ハングオーバー!」シリーズが有名だ。

 つまり、倫理的な罪を犯し、それを誠実に相手に伝えたほうが良いのか否か、という問題が重なるのであった。

 そんなジョン・ケイジを演じるのはピーター・マクニコル。映画「ソフィーの選択」でナイーブな作家志望の若者を演じていた俳優だが、こんな変な弁護士になっていて、私としては、たいへんに嬉しい。

 ちなみに、ジョン・ケイジの事件の判事はボイルという高齢の男性で、なぜか人の歯を見てその人を判断するという変わった人物。「スター・ウォーズ」のヨーダのようなお顔をしている。つまりこの回は、その後もしばしば登場するボイル判事の初登場の回でもある。