本と映画の埋草ブログ

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アリー my love_メモ◎006「婚約」[The Promise]

 アイスクリーム会社の商標登録のトラブルの裁判。アリーは相手側の太った弁護士ピピン氏と対決する。裁判の後、ピピン氏は突然ぶっ倒れ、アリーのマウス・トゥ・マウスの人工呼吸で一命を取り留める。
 ピピン氏は間も無く幼馴染との結婚式を控えていた。ピピン氏の彼女がアリーの元に訪れ、お礼を述べる。
 お相手の彼女もピピン氏と同じく太った女性だった。

 元気になったピピン氏もアリーの元を訪れる。彼はアリーへの恋心を告白。人工呼吸のキスが忘れられない、婚約を破棄する、と言う。そもそも婚約者の彼女とは友達同士であり、お互いに太っていて、ほかに選択肢が無いだけで、トキメク相手では無いという。
 驚いたアリーは、もちろん婚約者の彼女と結婚した方が良いと忠告。しかし、一方で、運命の人との出会いを夢見ているロマンチックなアリーなのだから、結婚式のときに隣にいるのは絶対にトキメク相手でなければならないという信条なのであり、妥協して彼女と結婚した方が良いという現実的で偽りのアドバイスができない。
 そんな経緯で、アリーはピピン氏の彼女に恨みを買ってしまう。

 さて、この回の裁判は売春婦の弁護という事件。
 アリーは事務所の変人弁護士ジョン・ケイジと共に、この裁判に挑むことになる。
 ジョン・ケイジ氏はこのドラマ2度目の登場で、ついに彼の弁護士としての活躍を見ることのできる。アリーはジョンと組むのは初めてなので、二人の間の空気が微妙なのが初々しい。

 さて、二人が弁護するのは元弁護士だというインテリのコールガール。
 この女性は、男女が一生を愛という名のもとに添い遂げるのは不可能であり、そんなことは現実的ではないと悟り、この商売を始めたのだと言う。ジョン・ケイジはその主張を推し進め、たっぷりの間をとって「偽善ほど嫌なものはない」と説く。金目当てで結婚しても罪にはならない。女性の性には商品価値がある。性を武器にして生きている女性がいるのは現実である。
 もちろん売春は法律違反であり、ジョン・ケイジの弁論は詭弁なのだが、なんと裁判に勝ってしまう。

 アリーは売春婦を弁護する立場であったが、勝利した後、落ち込むことになる。商売女を自立した女性みたいにいうのはおかしい、と。恋愛はロマンチックでなければならない、とアリーは信じたいのだ。
 裁判では現実に目を向け、偽善を攻撃したジョン・ケイジがアリーに言葉をかける。「ロマンチックな人種は、今も存在する。世間に負けるな、アリー・マクビール」と。

 しかし、その後、太っているピピン氏には、現実を見つめ、予定通り太った彼女と結婚したほうが良いと、アリーはアドバイスをしたのだった。
 彼らの結婚式に参加する複雑な表情のアリーの姿がラストシーン。美しくきらめくライスシャワーのバックに掛かるののは「I only wanna be with you」という曲。

 この回の途中のバーのシーンで「アリー my love」の歌姫ヴォンダ・シェパードがギターを弾きながらロックなバージョンを歌うのもチラリと流れるのだが、ラストに掛かるのはよりエモーショナルなバラードバージョン。
 この曲は、1963年、ダスティ・スプリングフィールドという方の代表曲であるとのこと。邦題は「二人だけのデート」。

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 あのベイ・シティ・ローラーズも1976年にカバーしている。さらに同じ1976年、ピンク・レディーまでもがカバー。

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 この回は傑作。アリー個人に起こるドタバタと裁判がスピーディーに展開し、音楽も素晴らしく、面白くて切ない。これぞ「アリー my love」!
 よく見ると、ラストの感動的なピピン氏の結婚式シーンは「I only wanna be with you」の曲が流れる1分にも満たない長さ。この素晴らしいシーンのためだけに、ロケ地を押さえ、エキストラを集め、衣装を用意し、紙吹雪が舞って撮影されたのだと分かる。こういうアメリカのテレビドラマの〈手を抜かなさ〉とお金の使い方は、本当に凄い。