本と映画の埋草ブログ

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アリー my love_メモ◎010「無慈悲な天使」[Boy To The World]

 華やかなクリスマスの準備シーズン、という中、今回はシリアス路線。

 アリーは、判事ウィッパーから、売春で捕まったステファニーの弁護をするように頼まれる。
 未成年のステファニーは本名スティーブンで、男だった。というわけで、性的マイノリティLGBTを扱うお話。
 現代アメリカでセックスコメディをやっている以上、避けて通れない題材だが、今回のアリーはこれを悲劇的に扱った。

 さて、ステファニーはオハイオの田舎から出てきて他に生活費を得る手段が無かったことから街角に立っていたわけで、アリーが話しかけると素直な善い子であった。そして服を作る才能があった。
 逮捕を免れるために、戦略的に精神障害を主張することにするアリー。ステファニーは自分は異常者ではないとぶつかるが、仕方なくアリーの意見を受け入れる。ウィッパーの計らいもあり、逮捕は猶予される。
 きちんとした仕事に就くということが猶予の条件として提示され、アリーは社長のフィッシュに頼み、ステファニーを事務所で雇用してもらうことに。

 さて、同時に語られるのはフィッシュの叔父の死にまつわるエピソード。
 フィッシュにとって死んだ叔父は父親のような存在で、こだわりを持って弔辞を読みたいとのこと。叔父は相当な変わり者であったらしく、そのひとつが背の低い人への偏見。
 そんなわけでフィッシュは弔辞で、叔父が背の低い人を嫌っていたエピソードを笑いと共に紹介したいと主張。しかし教会は、そのような差別的な話をすることは認められないとして裁判所に禁止命令を求めたのだ。
 はたして「偏見を持つ自由」は有りか無しか、という論争が繰り広げられる。偏見を認めないのは検閲となるのか。人種や信条ではなく、身体的特徴への差別は、許されるのか。
 結局、裁判所はフィッシュへの自由な発言の権利を認め、フィッシュの弔辞に続き、なぜかゴスペル隊が「背の低い人への偏見」を高らかに歌い上げるのであった。
 歌のシーンは圧巻だった。

 さて、ステファニーは、アリーの努力の甲斐あって、順調に立ち直りの道を歩み始めたかに見えたのだが、ラストで事件に巻き込まれ悲劇的展開となり、シリアスにこの回は幕を閉じる。ヴォンダ・シェパードの歌うクリスマスソングをバックに、雪の中、叔父の墓参りをするフィッシュの姿が切ない。

 といったわけで、しみじみ流れるクリスマスのスタンダードソングは「Let It Snow」で、映画「ダイ・ハード」で使用されていることでも知られている曲。「ダイ・ハード」で掛かるのはヴォーン・モンローという歌手のバージョンであるとのこと。
 ではフランク・シナトラのバージョンをどうぞ!

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