本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

蔓延するご清潔な安心・安全に慄け! 映画「激怒」

 残念なことに間もなく閉館する(2022年9月19日とのこと)ディノスシネマズ旭川で映画「激怒」を見た。
 高橋ヨシキ氏の企画・脚本・監督作ということで、いったいどのような映画なのか気になっていた。
 高橋ヨシキ氏は雑誌「映画秘宝」のアートディレクター兼ライターとして読者ページを担当していたほか、多くの文章を書いていた。映画製作関係では園子温監督の「冷たい熱帯魚」の共同脚本を務めている。どれも面白く思っていた。
 さらに印象を強くしたのはラジオ番組で、ちょっと前のことになるが、NHKのAMで放送していた朝の帯番組「すっぴん!」(藤井彩子アナ)の毎週金曜日(パーソナリティー高橋源一郎)において、映画を紹介する「シネマストリップ」というコーナーがあった。そこに登場していたのが高橋ヨシキ氏。ちょうど私の出勤時間と重なっていて、車を運転しながら聴いていた。
 ここでの高橋源一郎氏と高橋ヨシキ氏の掛け合いが面白く、つい紹介された映画をレンタルショップで探したりした。確かディストピア映画特集なんてのをやっていて、毎週毎週絶望的な未来の映画を紹介していたりした。

 さて、映画「激怒」であるが、独特のセンスで低予算という条件なので、自主映画っぽいチープさは感じたが、面白かった。
 富士見町という架空の街が舞台。街の不良たちと仲が良い暴力的な刑事・深間(川瀬陽太)が主人公。捜査の過程で死亡事故が発生し、深間は、なぜかニューヨークで謹慎・治療(?)させられる。3年後、富士見町に戻ると、街は「安心・安全・犯罪ゼロの街」となっており、警察署の機構も変わって、かつての署長はおらず、深間は準刑事という立場となった。かつて仲良くしていた不良たちは姿を消し、町内会の自警団が独自に街の浄化を行っていた。この街はいったい……。
 コンプライアンス重視の「安心・安全」世界は大変結構だが、果たして本当にそうなのか、との疑問をストレートに突き付ける物語だ。
 そんなわけでこの映画を見ていてまず思い出すのは「時計じかけのオレンジ」であるが、そのほかにもいろいろ過去の映画を連想した。それは「狂い咲きサンダーロード」だったり「ファイトクラブ」だったり「人魚伝説」だったりし、そういう映画を連想させる映画が詰まらないわけが無いではないか。とはいえ、実際に高橋ヨシキ氏がこれらの映画を念頭に置いていたかわからないし(おそらく間違っているような気がする)、映画マニアの高橋ヨシキ氏のことだから、もっとマニアックな映画の引用がたくさんあったのではないか。
 といったわけで、メジャーのきれいでそつない映画よりも、引っ掛かりがあって好ましかった。音楽も冒頭から暴力的。これがノイズミュージックというやつか。かっこいい。

企画・脚本・監督:高橋ヨシキ
2022年:R15
音楽:中原昌也、渡邊琢磨
配給:インターフィルム
上映時間:100分
出演:川瀬陽太、彩木あや、小林竜樹 ほか

 

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