ずいぶん久しぶりに、つかこうへいの小説を読んだ。「蒲田行進曲」で直木賞賞を受賞したつかこうへいが、受賞後第一作として発表した「寝取られ宗介」だ。1982年に小説として発表された作品。
つかこうへいの小説をすべて読んでいるわけではないが、読んだ中では一番好きな小説が「寝取られ宗介」である。
「寝取られ宗介」のどこが好きなのかを考えてみる。なんといってもラストの盛り上がりが素晴らしい。
劇団の音響係の青年が病床の妻に宛てた手紙という形式の小説なので、メインの話となる座長と妻レイ子の愛の物語、そして音響屋の妻への愛がラストで交差し、交響曲的な大音響を響かせるのである。
演劇的な「盛り上がり」でしか生きている実感が得られない「座長」を中心としたストーリーで、異常に面倒見の良い「座長」は、「腹黒日記」における「つかこうへい」自身を投影したキャラクターといえるだろう。そして、私はつか作品に登場する「つかこうへい」が大好きなのだ。だから、つかこうへいの著作の中でもっとも面白いのは「つかへい腹黒日記PART2」だと思っている。
「寝取られ宗介」は1992年に若松孝二監督で映画になっている。座長を演じたのは原田芳雄で、奥さん役は藤谷美和子。少なくともビデオでは見ているはずだが、全然覚えていない。もう一度見てみようと、いつも行くレンタルDVD屋さんで探すが、置いていなかった。
また、NHKでドラマにもなっている。「嫁ぐ日’84」というタイトルだから、映画よりずいぶん早い1984年のドラマだ。こちらはうっすらと奥さん役の大竹しのぶの姿を覚えている。ネットで調べると座長は萩原流行だったようだ。
私は演劇を見る習慣がなかったので、実はつか演劇を一度も見たことがない。東京では今でも結構な頻度で「つかこうへい作」の舞台をやっているようだ。機会があれば、観に行きたいと思っている。もちろん、つかこうへい演出の芝居を見ることは、もうできないけれど。