
踏切の幽霊
高野和明
文藝春秋
2022年12月10日初版発行
踏切に出現する幽霊の話であり、だから『踏切の幽霊』というタイトルの小説で、このタイトルが良いのか悪いのか。あまりにそのままで地味といえば地味。でもまあ、その地味さやカバーデザインのシンプルさを含め、良いといえば良い。
この小説を読もうと思ったのは「帯」に「『ジェノサイド』の著者、11年ぶりの長編」とあったからだ。
友達から薦められ、なんの予備知識もないまま読んだ『ジェノサイド』、実に面白かった。「人類絶滅の危機 アフリカに新種の生物出現」という情報がアメリカ大統領にもたらされるというのがプロローグ(あまりの情報に大統領は「なにこれ? ハリウッド映画の要約?」と内心思うのだけど、実はそれが本当だった?! という……)。風呂敷を広げるのにも程がある、といったエンタメ小説で、大いに楽しんだ。
とはいえ、そのままそんなことは忘れていて、高野和明という方の他の小説も読んでいなかったのだが、たまたま『踏切の幽霊』という本に目が留まった。いやあ、読んでみると、こちらも大変に面白かった。
なんともジャンル分けできないタイプのストーリーにシビレまくり。
著者略歴によれば、この作者の方は江戸川乱歩賞を受賞してデビューしているとのことで、そのまえは岡本喜八監督に師事していた方であるとのこと。
この『踏切の幽霊』も、話は暗すぎるかもしれないが、映画になったら面白そう。あまりに派手な『ジェノサイド』とは全然違う方向の話で、いやあ、凄いですなあ、こういう地味なのも、いけるのね。
お話をひとことでいえば、主人公の雑誌記者(元新聞記者)が、ひとりの女性の正体を追い求めるというミニマムな物語。これって宮部みゆきの傑作『火車』と同じ構成で、読んでいる途中、なんとなく『火車』っぽい手触りの小説だなあと感じていた。
空振りに終わる取材のあれこれまでが丁寧に描かれる前半は、読んでいて多少イライラするのだが、きっとそれは作者の計算。中盤からの怒涛の展開で「ああああああ」とゾクゾクさせられ、もうページを繰る手が止められない! 様々なことがらが繋がっていく終盤に至れば、面白い小説を読むというのはこういう感じだよなあ、という醍醐味が味わえた。
下北沢三号踏切に現れる幽霊の正体とは! 切なく感動的で怖い!