本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

暴力に魅せられた男たちが行き着くのは(地獄)か(煉獄)か(天国)か「天国の修羅たち」

天国の修羅たち

深町秋生

角川文庫

2022年8月25日初版発行

760円+税

 

 2022年9月16日公開の映画「ヘルドックス」の原作は、2017年9月にKADOKAWAから単行本として刊行された深町秋生「地獄の犬たち」である。この小説は2020年に加筆修正され「ヘルドックス 地獄の犬たち」として角川文庫となり、刊行されて間もなく読んだ。面白かった。

 「ヘルドックス 地獄の犬たち」は、すさまじい暴力が連鎖する小説である。深町秋生の小説は、いつも三人称の記述だが視点人物による一人称に近い描き方で、「ヘルドックス 地獄の犬たち」の視点人物は兼高という人物だ。関東最大の暴力団・東鞘会の若頭補佐で優秀なキラーとして名を馳せている兼高は、実は警視庁から特命を帯びた潜入捜査官だった!

 暴力に手を染めた刑事は、果たして元の警官に戻れるのだろうか、という物語である。

 「潜入捜査官」が広域暴力団の幹部に昇りつめるという設定は、完結編の「天国の修羅たち」の前半部分で、ヒロインが「あまりに荒唐無稽な内容に首を傾けたものだった」と独白しているように、ちょっと無茶な感もあるのだが、いやいや、緊張感があってヒヤヒヤです。マンガ「土竜の唄」といったようなコミカルなテイストは1mmも無く、かなりバイオレントな殺伐とした描写に終始する。

 

 そして2冊目。続編「煉獄の獅子たち」は3年後の2020年9月に刊行。さらに2022年6月、映画「ヘルドックス」公開情報の帯付きで文庫版となった。「ヘルドックス 地獄の犬たち」の続編にして前日譚だ。視点人物は二人。はじめに登場するのは我妻という警視庁のマル暴刑事。次は織内という人物で、関東最大の暴力団・東鞘会から分裂した和鞘連合を率いる氏家勝一の秘書兼護衛という設定。むむ、前作「ヘルドックス 地獄の犬たち」には一度も出てきていない人物ではないか! 誰だ!

 読み進めていくと、一作目で活躍していた人物たちが次々登場。そして衝撃のラスト! いやあ面白かった。これで一作目の「ヘルドックス 地獄の犬たち」の沖縄につながるんだねえ。

 

 いとったわけで映画公開直前の2022年8月25日、三部作完結編「天国の修羅たち」が文庫書き下ろしとして刊行。まず驚いたのがその薄さだ。前作2冊に比べ格段に薄い。半分くらい。とはいえ280ページ以上あるので特別薄いわけではないのだけど、前作2冊がボリュームがありすぎたのだ。「ヘルドックス 地獄の犬たち」は550ページ越え、「煉獄の獅子たち」は460ページ以上。

 薄いとはいえ内容は前作同様派手な暴力が待ち受けている。視点人物は警視庁捜査一課の若き女性刑事・神野。むむ、女性でしかも初登場。一作目の主役・兼高はいずこ?

 あれから一年、大物ジャーナリストの殺害事件が発生。捜査する神野と相棒のマル暴刑事の樺島が逮捕したヤクザが口にしたのは真偽が謎の “兼高ファイル”。といったわけで、この三部作、どのように決着するのか。

 まあ、ちょっと「そんなバカな」と思える箇所もあったけど、それはそれ、読者サービスだなと思いつつ、楽しく読み終えた。当初、本を薄いと思ったが、まあ、物語的には長大なエピローグということでよいのではないか。

 

 三冊を通し、敵味方、複雑に人物が登場している。この人物があそこに、といった部分を、読み落としているかもしれない。また読み直して、余韻に浸りたい。

 ああ、映画も早く見たい。岡田准一、坂口健太郎のほか松岡茉優北村一輝大竹しのぶまで出演するという。9月16日公開。楽しみ!

 

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