本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

一番好きな映画は「フェーム」

 一番好きな映画は何ですか、と問われた際、なんと答えるべきか。全然、誰にも聞かれないが、実は答えを用意してある。
 1980年公開のアラン・パーカー監督作品「フェーム」だ。

 ニューヨークの芸術高校を舞台に、ショービジネスの世界を目指す若者たちの群像劇。入試のシーンから始まって、卒業式で唐突に終わる。
 何人かの生徒たちのエピソードを繋げた形で構成されており、ストーリーはほぼ無い。
 だけどなぜか面白い。

 別に私だけが、この映画は最高! と思っている訳ではない。
 なぜなら、当時、アイリーン・キャラの主題歌は大ヒット。食堂で自然とジャムセッションになる、いわゆる「ホット・ランチ・ジャム」のシーンは、映画公開数年後コカコーラCMがパクっていたし、アメリカで連続テレビドラマ化されている。さらに2009年には映画としてリメイクまでされている。
 「フェーム」の映画の中で、映画「ロッキー・ホラー・ショー」を見に行くシーンが面白くて、「ロッキー・ホラー・ショー」を見ながら画面に悪態をついたり、決まった台詞を観客が一斉に叫んだり、雨のシーンになると傘を差したりする「ロッキー・ホラー・ショー」観客参加型鑑賞法を広く日本に広めたのも、この映画だと思う。

 そういったわけで、「フェーム」は、何度見ても面白い。冒頭に書いたとおり、大きなストーリーの流れは無く、エピソードの繋ぎ合わせの群像劇。短いコントが繋がっているようなお話なのに。
 音楽と、編集と、撮影の素晴らしさが分かる映画だからだろうか。なんだか映画らしい映画だと思えるのだ。

 高校生のときにこの映画を見た私は、サントラLPを買い、アイリーン・キャラが出る映画を追いかけた。
 といってもそれは、クリント・イーストウッドバート・レイノルズが共演した「シティヒート」にヒロインで出ていたのと、コメディ映画「D.Cキャブ」で、歌姫の本人役を演じてたりするのみで、あとは「フラッシュダンス」の主題歌大ヒットというがあったけど、その後ほとんど見かけなくなってしまった。
 長年、不思議に思っていたが、映画評論家の町山智浩さんのコラム集「キャプテン・アメリカはなぜ死んだか」(2009年 太田出版)を読んで疑問が氷解。契約問題でトラブルを抱えたアイリーン・キャラは、音楽業界全体を敵に回してしまい、このトラブルで、仕事を干されたのだという。芸能界は恐ろしい。

 まあ、とにかく大好きな映画なのだ。DVDを買ってからは、もちろん、一年に一回は見ている。見るたびに面白く、これからも見続ける映画の一本だ。

原題: FAME
1980年:アメリ
日本公開:1980年12月13日
上映時間:133分
配給:MGM=CIC

監督:アラン・パーカー
製作:デヴィッド・デ・シルヴァ、アラン・マーシャル
脚本:クリストファー・ゴア
撮影:マイケル・セレシン
編集:ジェリー・ハンブリング
作詞:ディーン・ピッチフォード、レスリー・ゴア
音楽:マイケル・ゴア

出演:アイリーン・キャラ、バリー・ミラー、リー・キュレーリ、ローラ・ディーン、ポール・マクレーン、エディ・バース、ジーン・アンソニー・レイ、ボイド・ゲインズ、アントニア・フランチェスキ、アルバート・ヘイグ、ジョアンナ・マーリン、モーリーン・ティーフィ、デビー・アレン、トレサ・ヒューズ、アン・メアラ、スティーヴ・インウッド、メグ・ティリー、リチャード・ベルザー ほか