本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

周囲なんかと馴染まず毒づけ!「ゴーストワールド」

 10年くらい前に一度見ている「ゴーストワールド」だが、久しぶりに見てみようと思い、TSUTAYA豊岡で借りてきた。むむっ、こんなに面白かったっけ。見ているあいだ、ずっと心がザワザワする。素晴らしい。傑作だ。アメリカのコミックを原作とした2001年のアメリカ映画。

 

 高校を卒業したけど進学もせず就職もせず、街で悪ふざけをする女の子二人組が主人公。ゾーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソンが演じている。

 この二人は、たちが悪い。

 周囲と馴染めず、まわりがみんな馬鹿に見えるという思春期にありがちな自意識過剰状態で、身近なダサイものとかダメなものを徹底的に笑おうという性格の悪さ。すでにすっかり笑われる側のオヤジ的立場にいる当方としては見ていて実に不快。

 と思っているうちに、彼女たちは出会い系新聞広告を出していた孤独なオタクのオジさんを標的にする。それが古いブルースのレコード収集家のスティーブ・ブシュミ! ふたりは、どう見ても世間から浮いているおじさんブシュミを観察し、からかい、笑いものにするのだが、その後、なぜか物語は、周囲に馴染めない元女子高生のゾーラ・バーチと、社会に馴染めないオジさんブシュミの切ない物語になっていく。

 スカーレット・ヨハンソンは相変わらず生意気そうで素晴らしいのだが、それ以上にゾーラ・バーチの訳の分からなさが衝撃的。

 周囲がダサく見えて馴染めない、といったことは、若者にありがちな「いやらしさ」であり、大昔かつて若者だった私にも覚えがある。っていうか「このセンスが分からぬ馬鹿どもとはお話にならん」といった感覚は恥ずかしながら未だに私の中にあり、それは何かのきっかけで露出し、「あ、おれ今、変な優越感を露呈させているのでは」と、逆に自己嫌悪に陥ったりする、といったことを、この歳になっても繰り返してはいないだろうか。ああ、恥ずかしい。

 それはともかく、この映画ではヒロインたちの周囲の人物たちも魅力的だ。コンビニの店員をやっている同級生や店の店長、上半身裸で店を訪れるヌンチャク男、廃線となったバスを待ち続ける老紳士などなど、ちょっと奇妙で面白い愛すべきキャラターたち。

 そういえば私は、特に何も起きない青春群像劇映画が大好きだった。「の・ようなもの」「フェーム」などである。そうか、この「ゴーストワールド」も同じ箱の中の映画ではないか。なにか引っかかって再見した「ゴーストワールド」だが、理由はこれだったのだ。私の中のベスト作品がひとつ増えた。

 

ゴーストワールド(2001年)111分

原題:GHOST WORLD

アメリ

監督:テリー・ツワイゴフ

原作:ダニエル・クロウズ

脚本:ダニエル・クロウズテリー・ツワイゴフ

撮影:アフォンソ・ビアト

出演:ゾーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソンスティーヴ・ブシェミブラッド・レンフロー ほか