本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

アリー my love_メモ◎005「涙の数だけ」[One Hundred Tears Away]

 冒頭、スーパーマーケットでオバさんとポテトチップスの奪い合いとなり、暴力を振るったとして逮捕されるアリー・マクビール
テンポの良いコミカルな展開が可笑しい。

 その後、暴行事件だけでなく、避妊ゼリーの万引き容疑まで加わり、アリーは弁護士としての資質を問われ、業務停止命令の危機に瀕する。彼女に対する聴問会が開かれることとなる。
 その聴問会では過去のエピソードが蒸し返される。
 第1話において、道で軽くぶつかったオジサンたちに理不尽な悪態をついていたこと。さらに、第4話のドーソン教授葬儀における不適切な弔辞の件。

 そして、アリーの精神的不安定に関する証人として、事務所のおせっかい秘書でトラブルメーカーのエレインが召喚。アリーの問題行動をつい証言してしまう、というお決まりのギャグ!

 そんなわけで、コメディとして軽快な5話目。

 初めて「アリー my love」を見始めた頃、最初の方はあまり面白いと感じなかった。キャリアウーマンが恋も仕事も頑張る、なんてお話は、そもそも女性向きのドラマであろうと思っていたせいもある。ところが、このあたりから、ようやく、これは面白いぞ、と思い始めた。とにかくこの回は、アリーがヒドイ目に遭い続ける。

 なぜ避妊ゼリーを買おうと思ったのか(相手もいないのに!)とルームメイトのレネや同僚で元恋人のビリーにしつこく追及されるアリーが、その思いを吐露するところが泣かせる。
 宝くじを買ったことがある? 私はたまに宝くじを買うことがある。いろいろ想像するのが楽しいから。もしかすると、運命の人に今日出会うかもしれないじゃない。私の宝くじはチューブ入りなの。

小林信彦のコラム1998年「人生は五十一から」

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「人生は五十一から」
小林信彦
文春文庫
2002年4月10日初版発行

初出誌 週刊文春
単行本 1999年6月

 2021年7月、いつものように地元の図書館で「週刊文春」最新号を読んでいたら、小林信彦のコラムが最終回とあり、驚いた。
 よく考えれば小林氏は高齢だし、数年前に脳梗塞で長く入院されていたし、連載終了は納得できるのだが、週刊文春を開くと小林信彦のコラムが載っているというのが当たり前だと思っていたので、かなり寂しい気持ちになった。
 そういえば先日、いつものように筒井康隆のネット日記「笑犬楼大通り」を読んでいたら、その日記を止めるつもりだ、と書いてあった。筒井氏と小林氏は同年代の作家であり、仕事を減らすのも仕方ないことだが、どんどん私の楽しみが減っていくようで、寂しい限り。いつまでもあると思うな……、というものなのだなあ。

 そんななか、古本屋で文庫「人生は五十一から」を見つけ、購入。週刊文春にコラムを新連載した際の最初の本を文庫化したものだ。1998年の1月から12月までの分が収録されている。

 なんとこの年は〈長野オリンピック〉の年であり、それに言及している部分が、まるで2021年の〈東京オリンピック〉みたいで面白い。
 「長野オリンピックはスキャンダルまみれであり~」とあり、オリンピックというものは、ずっとそういうものであったのだなあと再認識。開会式、閉会式にもふれており、「開会式とか閉会式といったセレモニーは、世界に中継される限り、ショウとしての構成がしっかりしていなければならない。これがまた、日本人のもっとも不得意なところである。不得意というよりも、感覚的に欠如している部分かもしれない」と書かれていて、それを読みながら、ああ、そういえば〈伊藤みどりのけったいな衣装〉〈サンタクロースに化けたベンジャミン伊東〉みたいな欽ちゃん、といったものを思い出した。小林信彦は、彼らキャストを〈ただ気の毒〉と述べている。確かに2021年の東京オリンピックでの東京スカパラ大竹しのぶは〈気の毒〉に感じた。

 といったわけで、1998年、小林信彦は六十代半ばという年齢。20年以上も前になる。
 1998年とは、いかなる年であったのか。
 「人生は五十一から」によれば、橋本政権からオブチ政権に変わり、不況で、サッカーのワールドカップフランス大会に日本が初出場で不気味なくらいの盛り上がりになり、黒澤明が亡くなった年である。
 
 あとがきに「コラムというのか、エッセイというのか、そういうものを週刊誌に連載するのは初めてなので~」なんて、小林信彦にしては殊勝なことを書いている。連載一年目だからか、内容的に小林氏なりのサービスが感じられる。
 たとえば、「日本の喜劇人ベスト10」なんていう回がある。それによれば、この時点で小林信彦の記した喜劇人10人は、榎本健一古川緑波横山エンタツ益田喜頓森繁久弥三木のり平フランキー堺植木等藤山寛美渥美清。ちなみに、2021年5月発行の「決定版 日本の喜劇人」あとがきに「いま、私流に喜劇人というと~」とあって、そこでは 植木等由利徹の名を記している。
 さらに、岩波新書で「現代〈死後〉ノート」(1997年刊行)という流行語解説本を2冊出した勢い(?)で、「みっともない語」「〈恥語〉ノート」と題し、このころの日本語のアレコレを考える回が複数回あったりする。

 最後に、けっこう凄い発言と思ったのは「明治以降の日本文学は、結局、三百くらいある江戸落語の深みに及ばないのではないかという一事だ」というくだり。60年くらい落語を聴いてきて、つい最近、思ったことであるという。古今亭志ん朝の独演会に関する回での記述で、大真面目にそう思って書いているのか、洒落で書いているのかさっぱりわからない大仰さであり、さらりとこんな表現をするあたりが、小林信彦の真骨頂というべきか。

 

アリー my love_メモ◎004「ラブ・アフェア」[The Affair]

 大学時代の先生が死去した、とアリーはフィッシュから聞かされる。その先生、ドーソン教授とアリーは、一時期不倫関係にあった!
 というわけで、原題の「The Affair」とは情事という意味らしい。ズバリ「不倫」についての回。

 さて、教授の奥さんから弔辞を依頼されたアリーはパニック状態に! どうやら奥さんは、アリーと教授の不倫を知らなかったようだけど、しかし罪悪感いっぱいのアリーは、たびたびビリーの部屋へ行き、相談をすることに。かつての恋人同士との距離がぐっと縮まったので、ビリーの妻のジョージアも嫉妬気味。
 さらに、前回揉めたロナルド氏とよりを戻したアリーだが、ビリーとの急接近が原因となり、再びフラれることとなる。

 今回は不倫一筋のエピソードであり、裁判ネタは無し。

 冒頭、秘書エレインの発明「フェイスブラ」が登場する。顔に装着するブラジャーとのことで、若さのために行うジョギングによる顔の皮膚の上下運動は、結果的にシワを作ることになるので、このフェイスブラが有効であるとのこと。フェイスブラを着けたエレインを見たアリーの第一印象は「『羊たちの沈黙』のレクター博士みたい」。その後も、このエレインの発明趣味は、数々のギャグを生み出すこととなる。

 そんなわけで、過去の不倫をめぐるドタバタでいろいろ落ち込むアリーを慰めるため、ラストシーンでビリーはアリーとともに思い出の曲でダンスを踊る。
 「ジョニー・マティスのピラミッドが出てくる曲!」ということで、タイトルは「You Belong To Me」。
 ウィキペディアによれば「ユー・ビロング・トゥ・ミー」は1952年の曲らしく、パティ・ペイジという人の歌が有名らしい。
 その後多くの人がカバーしている。
 YouTubeで検索するとセリフに出てくるジョニー・マティスのものもあった。

 

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モーさま上京一年目1971年の傑作群「11月のギムナジウム」

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萩尾望都
小学館文庫
1976年4月20日初版発行

 昔々、長く愛され名作と呼ばれるような本は文庫本となり、安価で広く流通されている、と思っていた時代があった。現在は、そうではなく、「あ、これ文庫になっている!」と見つけた瞬間に買っておかないと、あっという間に絶版になっていて驚く、というくらいのものである。
 そういったわけで、70年代中ごろのことだから、大昔といってよいと思うが、このころはまだ名作を文庫にして残す、といった神話が有効性を持っていて、だから名作マンガを文庫にしようという出版社が現われ、白土三平忍者武芸帳」とか、つげ義春ねじ式」とか、石森章太郎サイボーグ009」とかを文庫版で出したら、これが大当たり。小学館文庫という名で、その後ほかの出版社も続々と文庫サイズのマンガを出し、マンガ文庫ブームというものが起きた。

 といったわけで、萩尾望都の初期短編集「11月のギムナジウム」も小学館文庫の一冊として1976年4月に発行された。
 あとがきに「上京一年目の作品群」とある。
 収録作は以下の9作。

「11月のギムナジウム」1971年11月
「雪の子」1971年1月
「塔のある家」1971年2月
「白い鳥になった少女」1971年10月
「白き森白き少年の笛」1971年9月
ビアンカ」1970年5月
「小夜の縫うゆかた」1971年6月
「秋の旅」1971年8月
「かわいそうなママ」1971年4月

 ちなみに私の持っているのは1976年に出た古い小学館文庫で、現在も小学館文庫で同名の本が発売されているが、収録作が違っているようだ。

 久々だったので、かなり新鮮な気持ちで読めた。いやあ、驚きだ。いずれも傑作すぎる。
 そして発表の日付を見て、さらに驚愕した。ほぼ毎月、これらの名作が発表されていたのだ。奇蹟の年なのか1971年!

 短編とはいえ、表題作「11月のギムナジウム」は45ページもある。いわずとしれた名作「トーマの心臓」のアナザーストーリーだ。
 「塔のある家」のお話は、2時間の文芸大作映画のような重厚さと繊細さ。いずれも、絵がおそろしく魅力的で、話が感動的でしかも面白い。
 萩尾初期作品としては珍しく、日本を舞台とした「小夜の縫うゆかた」は、読み終えたとき、良質な日本映画を見終わったのと同じくらいの満足感と感動を得られるが、ページ数を確認してみると、わずか16ページだったりして、びっくりする。そして、よくよく読んでみると、その半分くらいが主人公・小夜の回想が占めていて、その回想部分の絵とページ運びが、映画用語っぽく記せば、とても美しいモンタージュなんですなあ。いやあ、なんだこれ、素晴らしいです。

 1971年にはこのほか「精霊狩り」や「10月の少女たち」などの作品が発表されていて、この時期にはどんどん名作が描かれていたほか、講談社の雑誌でボツとなっていた短編が小学館の雑誌で復活した、という要因もあるのかもしれない。

 

アリー my love_メモ◎003「恋愛方程式」[The Kiss]

 2話目に登場した「ケイジ&フィッシュ法律事務所」のクライアント候補でイケメンのロナルド・チーニー氏とアリーとのデートのお話がこの回のメイン。
 というわけで、アリーはイケメンのドナルド氏とのデートに臨み、別れ際ロナルド氏はアリーのほっぺにキスをする。
 大人の男女がデート終わりでほっぺにチュ?!
 というのは違うだろう、そんなの男じゃないだろう! とアリーの不満が大爆発して……
 というのが全編にわたり主張される。

 もうひとつは「ケイジ&フィッシュ法律事務所」が抱えた裁判の話。
 こちらはテレビ局を解雇された女性キャスターが、その解雇は不当だとしてテレビ局を訴えるという裁判。
 アリーはビリーの妻ジョージアと組んでこの裁判を担当する。
 テレビのニュース番組の女性キャスターはベテランで優秀だが歳を重ね容姿は衰えている。そして、突如、解雇されてしまうのだ。局側は、現実にテレビ局は視聴率を取らねばならず、仕方ないとの見解。
 テレビ局の重役は証言する。私は解雇に反対だが、アメリカは愚民の国であり、内容は無くとも見栄えのする若くて綺麗な、つまりは裸を見たくなるような女性を画面に出さねばならず、愚民に迎合しなければならないのだ、と。
 ちょっとわかりやすい悪役だな。
 いずれにせよ、アリーとジョージアがコンビを組むという事態に、周囲はハラハラドキドキするという展開。

 アリーたちは、敵の弁護士から40万ドルの和解金の話を持ちかけられる。凄い好条件だが、女性を見た目で値踏みするような裁判内容に憤っているアリーはこの話を蹴ってしまい、裁判は判決に持ち込まれる。はたして……!

 ところで、アリーとロナルド氏の恋の行方だが、アリーはフラれることになる。
 塵芥収集車から廃品もろとも投げ出されるアリーの姿、という、おなじみのCGギャグ!

 というわけで、元恋人ビリーに愚痴をこぼす。そこで理想を語るアリー。「仕事で成功して、お金持ちになって、結婚して。子供は三人。夜、旦那様に足をさすってもらう……。だけど、見て、髪も思い通りにならない!」
 男性と対等に渡り合わねばならぬ過酷な職場でバリバリのキャリアウーマンがふと漏らす、ささやかな夢!

 さて、ちょっと弱気になったアリーであったが、裁判での弁論がうまく進み、裁判後、ハイになったアリーは自分を袖にしたロナルド氏のオフィスに乗り込み啖呵を切る。
 「なによ意気地なし。フリフリのエプロンの従順な奥さんが欲しいなら、けっこうよ、ゴマンといる。だけど、手ごたえのある女が良いのなら、努力して。その価値はある筈よ」
 かっこいい、と言わざるを得ない。

 

アリー my love_メモ◎002「愛は妥協から」[Compromising Positions]

 「アリー」第2話目は、なんといってもジョン・ケイジ初登場の回。

 「アリー my love」の舞台となる法律事務所「ケイジ&フィッシュ法律事務所」の共同経営者であるジョン・ケイジはシリーズを通して重要人物の一人だが、シーズン最初はレギュラーというより、ゲスト的な扱いだったようだ。この2話目に登場した後は、6話目まで登場しなくなる。

 ジョン・ケイジとは、高名な現代音楽家と名前が同じ。おそらく偶然ではないのだろう。
 私は現代音楽に関する知識など一切ないが、昔、ジャズピアニスト山下洋輔の面白エッセーを読んでいたからジョン・ケイジの名前をたまたま知っていた。最も有名な「4分33秒」はピアノの前で音を出さないという曲らしく、山下洋輔もこの曲を演奏したことがあるという。
 いずれにせよ、そういった変な音楽を作るような変な人、ということでその名が付けられたのではないか、と勝手に想像している。また「アリー my love」のジョン・ケイジは天才弁護士でもあるので、同じく天才という意味もあるのだと思う。

 さて、そんな天才なのだが、ドラマ「アリー my love」に登場するジョン・ケイジは売春婦を買ったため逮捕されてしまう、というエピソードで姿を現す。大変にカッコ悪い登場だ。社長が買春で逮捕されたのだ。従業員にとって、こんなに体裁の悪いことは無い。情けない。
 しかも、ジョン・ケイジは売春婦を買った件に関し、スタッフたちを前に釈明演説を行う。すなわち素人の女性を騙すのに比べると、プロを買う方が誠実との主張。演説後、ものすごく変な空気になるのだが、ジョンはこの意見が誠実だったと信じており、スピーチについて好感度アンケートを取って回るというのが可笑しい。アリーは最初は、上司だからと気づかいをみせていたのだが、結局「あなたの演説、サイテー!」と言い放つ。

 もうひとりの経営者フィッシュの歳上の恋人ウィッパーも初登場。演じるのはダイアン・キャノンという人で、調べてみると、この人はかつてケーリー・グラントの奥さんだった人であるという! なんか凄いなあ。

 この回は、ケイジの買春、フィッシュと恋人ウィッパーの喧嘩(ウィッパーが若い男とキスしていたのをアリーが目撃し、それをフィッシュに言ってしまう)、そしてアリーの元恋人ビリーがバチュラパーティーに売春婦を呼んでいた過去、この3つのエピソードで騒動が起こるという回。
 バチュラパーティとは、結婚前に花婿と損保友人が馬鹿騒ぎをする習慣らしい。映画では「ハングオーバー!」シリーズが有名だ。

 つまり、倫理的な罪を犯し、それを誠実に相手に伝えたほうが良いのか否か、という問題が重なるのであった。

 そんなジョン・ケイジを演じるのはピーター・マクニコル。映画「ソフィーの選択」でナイーブな作家志望の若者を演じていた俳優だが、こんな変な弁護士になっていて、私としては、たいへんに嬉しい。

 ちなみに、ジョン・ケイジの事件の判事はボイルという高齢の男性で、なぜか人の歯を見てその人を判断するという変わった人物。「スター・ウォーズ」のヨーダのようなお顔をしている。つまりこの回は、その後もしばしば登場するボイル判事の初登場の回でもある。

 

アリー my love_メモ◎001「めぐりあい」[Pilot]

 そんなわけで、1997年から5シーズンにわたって続く「アリー my love」第一回目を見直してのメモ。
 主人公は女性弁護士であるアリー・マクビールで、このドラマはキャリアウーマンが数々の困難にめげず仕事も恋も一生懸命頑張るコメディ、といった理解でよいのでしょうか(違うような気がする)。

 物語はアリーの心の声、ナレーションからはじまる。初期「アリー my love」にはアリーのナレーションが多用されている。久しぶりに第一回目を見ると、このアリーのナレーションに違和感を感じてしまう。というのは、シリーズが進んでいくのにしたがい、ナレーションが無くなっていくから。

 さて、ドラマではまず、アリーのこれまでが簡単に語られる。
 幼なじみの男の子ビリーとお尻の匂いを嗅ぎあったこと(犬の真似であるらしい)、はじめてキスをしたこと、ビリーの後を追い法律家を目指しハーバード大学に入ったこと等々。
 ところがビリーは法律家としてのキャリアを積むためミシガンへ転校してしまう。意地を張ったアリーはそのままビリーと別れてしまう。
 そんな回想シーンがあって、現在のアリーの様子が描写される。

 アリーは地元ボストンで弁護士として頑張る20代後半のキャリアウーマン。しかし、上司からセクハラを受け、さらに仕事を失う羽目に……。

 この第一回目は非常に密度が濃い。
 まずは主要登場人物たちを紹介しなくてはならない。

 失職したアリーは、すぐに大学時代の同級生フィッシュにばったり出くわす。
 フィッシュは、ドラマ「アリー my love」全シリーズの副主人公といってよい人物で、まったく尊敬のできない男として描かれる。金のことしか考えていない倫理観の低い人で、それゆえに(!)自らの事務所を構える成功した弁護士になっていた。突如再会して声を掛けられたアリーの台詞は「やだ、最低!」である。しかし、アリーは誘われるままにフィッシュの事務所へ転職する。

 そこには、幼馴染で恋人だったビリーがいた。運命の人である。
 かつての恋心に再び火がついてしまったアリーだが、なんとビリーは既に結婚していた! しかも奥さんはバービー人形みたいな金髪の美人で、しかもインテリな弁護士。
 以後、ドラマ「アリー my love」は、アリーとビリーと奥さんのジョージアの三角関係を基調としたコメディとなる。

 さて、アリーのルームメイトのレネ、フィッシュ事務所でアリーの秘書となるエレインなど、後の主要な出演者も効率よく紹介され、さらにアリーにセクハラをした上司への復讐戦とか、フィッシュ事務所での初仕事での挫折など、めまぐるしいほどの展開。
 このドラマの名物となるCGギャグも第一回目から全開で、心が傷つく表現として胸に矢が刺さったりするほか、ビリーと再会したことで貧乳を気にしたアリーが、ブラジャー姿を鏡に映して見ているうちに、どんどん巨乳になるという、女優なら絶対断るようなギャグまであった。

 また、この回でおかしかったのは、心が荒んだアリーが道で軽くぶつかったオジサンたちに理不尽な悪態をつくシーン。論理的に怒りをぶつけ、まくし立てるアリーのキレぶりが最高!
 さらに、音楽の使い方が洒落ていて、アリーの家に三角関係の敵であるジョージアが訪ねてくるシーンでかかるのは「サイコ」のあの音楽! また、後にアリーの心の〈テーマソング〉となる「Tell Him」が、早くも流れるのがシビレる。
 初回のキーとなる楽曲は、ビリーとの記憶を呼び起こす「Neighborhood」という甘い曲で、ネットで調べてみると、どうやら1974年のDino & Sembelloというフィラデルフィア出身のデュオの曲らしい。

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アリー my love」の歌姫Vonda ShepardのバージョンのYouTubeは↓

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