本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

小林信彦による1981年の笑いの現場リポート「笑学百科」

笑学百科

小林信彦

新潮文庫

1985年7月25日初版発行

400円

 

 古本屋で「笑学百科」を発見した。文庫版「日本の喜劇人」同様、いつの間にか紛失して、また読んでみたいと思っていた本だ。

 「笑学百科」は1981年2月から6月まで夕刊フジに連載されたものをまとめたもので、1982年に単行本として刊行、1985年に文庫となった。作者による「文庫版のためのノート」に「日本の喜劇人」の〈別冊〉ともいうべき、と書いてあるので、小林信彦自身にとってそういう位置づけの本であるわけだ。実際、上下巻の豪華本「定本・日本の喜劇人」(2008年)が刊行された際は、この「笑学百科」も含まれた形で編まれていたようだ。ただし、2021年の「決定版 日本の喜劇人」には「笑学百科」は入っていなかったので、久しぶりに読みたいと思っていた。

 確かに〈決定版〉に「笑学百科」が入っていないのは、日本の喜劇役者を俯瞰的に描写した「日本の喜劇人」「喜劇人に花束を」と比べると、トーンというか、伝え方が違っているからだろう。1981年に夕刊フジに連載した「笑学百科」は、小林信彦による現場からのリポートといった臨場感に溢れた内容になっている。なんたって最初の話題は「ザ・ぼんち」のレコード「恋のぼんちシート」を買いに行くというくだりである。さらに「たけしのオールナイトニッポン」初回を聴いて衝撃を受けたりしているのが、いかにも1981年っぽい。MANZAIブームの渦中で、小林信彦は50歳くらいであり、「唐獅子株式会社シリーズ」の後半を書いていたりした時期。「ちはやふる奥の細道「夢の砦」を発表する直前くらいである。小説家として脂が乗りきっていたころだ。

 今回、読み直して改めて思ったのは、意外に落語の話題が多かったこと。あと、解説が景山民夫というのも、いかにも80年代という感じがしたこと。表紙が峰岸達による味のあるウディ・アレンのイラストで、本文中も連載時のイラストがたっぷり添えられていて、実に楽しい本だった。名著!

 

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