本と映画の埋草ブログ

本と映画についてあまり有意義ではない文章を書きます

さかなクンの半生を、のん主演で、という奇跡「さかなのこ」

 


 私は女優のんのファンで、さらに沖田修一監督の「横道世之介」(2013年)が好き、といったわけで「さかなのこ」は映画館でチラシを見つけて以来、大いに期待していた。そんな条件であるから、私にとって映画「さかなのこ」は面白いに決まっているのだ!
 「さかなのこ」のモチーフは「さかなクン」である。映画を見終わり、いったい私はいつから「さかなクン」を知っているのだろうか、と考えた。わからない。いつの間にか、あの特異なキャラクターを受け入れていたのだ。いつも極度に緊張しているように見え、奇妙な帽子をかぶり、ぎこちない甲高い声でしゃべるさかなクンは、テレビの中でも明らかに挙動不審な人物だ。不審ではあるが、魚への愛は伝わり、真摯な人物との印象は受けるのだった。
 能年玲奈さかなクンということで思い出すのはNHKの朝ドラ「あまちゃん」だ。芸能プロをクビになったヒロインのアキが起死回生のきっかけとしたのが、さかなクンと共演の子供向け番組「見つけてこわそう」だった。番組内で二人は「じぇじぇじぇ」「ギョギョギョ」と言い合い、楽しそうだった。
 「さかなのこ」の原作は、さかなクンの自伝的エッセイらしいので、映画のエピソードのいくつかは実際にあったことなのだろうが、映画用の創作も多そうだ。だいいち近所に出没していた「ギョギョおじさん」は、いくらなんでもフィクションだろう。
 そんなわけで、映画はエピソードが連なる構成で、コントの連続のようにも見え、笑ってしまう。海水浴場でのタコのエピソードや、高校時代のヤンキーたち(なぜ交友関係がすべてヤンキーなのか?)との交流が可笑しい。沖田監督の傑作「横道世之介」もエピソードの積み重ねのような構成だったので、これはいわゆる沖田監督の作風というものなのだろう。
 大変に面白かったり、気に入ったエピソードがある反面、意味不明だったり、分からなかったシーンもある。冒頭の「男か女はどっちでもいい」という字幕はいらなかったのではないか。
 といったわけだが、のんが可愛くて、エピソードが面白くて、好きなものにまっすぐな変人を周囲の人が愛して助ける展開が続き、見ているあいだ、とても幸せな時間だと感じた。いつまでも見ていられそうだと思った。撮影したがカットしたシーンとかがあるなら、再編集して公開してほしい。5時間バージョンとか作っていただきたい。っていうか、さかなクンの半生を、のん主演で、沖田修一の演出で映画にする、といったことを考えたのは誰なのか。一種の奇跡が起きたといってよいと思う。

さかなのこ(2022年)139分
監督:沖田修一
原作:さかなクンさかなクンの一魚一会 ~まいにち夢中な人生!~』(講談社刊)』
脚本:沖田修一、前田司郎
撮影:佐々木靖
音楽:パスカルズ
主題歌:CHAI『夢のはなし』

出演:のん、柳楽優弥夏帆磯村勇斗岡山天音、西村瑞季さかなクン三宅弘城井川遥 ほか

 

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